日本を代表するお茶の産地といえば、静岡県と鹿児島県を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。お茶好きの間でもよく話題にのぼるのが、「鹿児島茶と静岡茶はどっちが甘いのか」という疑問です。どちらも素晴らしい品質を誇りますが、実は味わいの方向性にははっきりとした違いがあります。
毎日のお茶の時間をもっと楽しくするために、それぞれの産地が持つ個性を知っておくことはとても大切です。甘みが強いお茶を求めているのか、それともスッキリとした清涼感を求めているのかによって、選ぶべきお茶は変わってきます。この記事では、両産地の特徴を比較しながら、その「甘み」の秘密に迫ります。
お茶の味わいは、品種や栽培方法、そして仕上げの工程によって驚くほど変化します。それぞれの産地がどのようなこだわりを持って、私たちに美味しい一杯を届けてくれているのかを紐解いていきましょう。この記事を読み終える頃には、今の自分にぴったりな一杯がどちらなのか、きっと見つかっているはずです。
鹿児島茶と静岡茶はどっちが甘い?産地ごとの特徴を徹底比較

結論からお伝えすると、一般的に「甘みやコク」を強く感じやすいのは鹿児島茶だと言われることが多いです。一方で、静岡茶は「お茶らしい爽やかな香りと適度な渋み」が持ち味であり、バランスの良さが魅力です。どちらが美味しいかという優劣ではなく、好みの問題が大きく関わってきます。
鹿児島茶が甘いと感じられる最大の理由は、温暖な気候を活かした品種構成と、「深蒸し」という製法にあります。また、近年では「さえみどり」や「ゆたかみどり」といった、天然の甘みが強い品種が多く栽培されていることも要因の一つです。太陽の光をたっぷり浴びて育つ鹿児島茶は、濃厚な旨みが凝縮されています。
対して静岡茶は、日本のお茶のスタンダードとも言える「やぶきた」品種が中心です。特に山の斜面で栽培されるお茶は、澄んだ香りと心地よい渋みが特徴で、後味が非常にスッキリしています。甘さの質が「とろりとした濃厚な甘み」の鹿児島に対し、静岡は「清涼感の中にある上品な甘み」といえるでしょう。
甘みの決め手となる品種の違い
お茶の味を左右する大きな要素に「品種」があります。鹿児島県は、全国でも屈指の多品種生産地として知られており、特に甘みが強く渋みが少ない品種の栽培に力を入れています。代表的な「さえみどり」は、名前の通り鮮やかな緑色と、お菓子のような濃厚な甘みが特徴です。
一方の静岡県は、日本茶の王道である「やぶきた」の栽培面積が非常に広いです。やぶきたは、甘み・旨み・渋みのバランスが完璧に整った品種であり、飲み飽きない美味しさがあります。鹿児島茶が「個性的で分かりやすい甘み」を持つのに対し、静岡茶は「深みのある調和のとれた味わい」を追求しています。
このように、植えられている木の種類そのものが異なるため、一口飲んだ瞬間の印象が変わるのです。鹿児島では早生(わせ)品種と呼ばれる早く収穫できる種類が多く、これが若々しいエネルギーに満ちた甘みを生み出しています。自分の好みが「濃厚派」か「正統派」かで、選ぶ品種も変わってくるでしょう。
蒸し時間の違いがもたらす味わいの変化
お茶の製造工程にある「蒸し」の作業も、甘みの感じ方に大きく影響します。鹿児島茶の多くは「深蒸し茶」という製法で作られます。これは通常よりも長い時間蒸すことで、茶葉が細かくなり、成分が抽出されやすくなる方法です。その結果、お湯を注いだ際に濃厚でコクのある甘みが引き出されます。
静岡茶にも深蒸し茶はありますが、伝統的には「普通蒸し(浅蒸し)」も多く見られます。普通蒸しは茶葉の形がしっかりと残っており、お湯の色は澄んだ黄金色になります。蒸し時間が短い分、茶葉本来のフレッシュな香りが際立ち、キレのある味わいを楽しむことができるのが大きな特徴です。
深蒸しにすると、渋みの元であるカテキンが壊れやすくなり、相対的に甘みや旨みが強く感じられるようになります。鹿児島茶を飲んで「甘い!」と感じる人が多いのは、この深蒸し製法による恩恵も大きいのです。とろりとした濃厚な口当たりは、深蒸しならではの贅沢な感覚と言えるでしょう。
地形と気候が育む茶葉の個性
鹿児島県は平坦な土地が多く、広大な茶園で機械化が進んでいます。南国の強い日差しは茶葉にたっぷりの栄養を蓄えさせますが、そのままでは渋みが強くなりすぎることもあります。そこで、収穫前に黒い布を被せて日光を遮る「被覆(ひふく)栽培」という技法が広く行われており、これが強い旨みと甘みを生んでいます。
対して静岡県は、富士山を望む山間部から海岸に近い平野部まで、非常に多様な地形でお茶が作られています。特に「川根」や「本山」といった山間部の茶園では、朝霧が発生しやすく、これが天然のカーテンとなって直射日光を適度に遮ります。この環境が、静岡茶特有の気品ある香りを育てているのです。
広大な大地で太陽の恵みをコントロールして作る鹿児島の甘みと、厳しい自然環境の中でじっくりと育まれる静岡の旨み。どちらも産地の個性が色濃く反映されています。気候の違いを知ることで、湯飲みに注がれた一杯のお茶の向こう側に、広大な茶畑の風景が浮かんできそうですね。
【豆知識】お茶の「甘み」の正体とは?
お茶に含まれる甘みの成分は、主に「テアニン」というアミノ酸の一種です。これはリラックス効果がある成分としても知られています。日光を遮る栽培方法をすると、このテアニンが渋み成分のカテキンに変化するのを防ぐことができるため、より甘いお茶になります。
鹿児島茶が持つ「濃厚な甘み」と鮮やかな緑色の秘密

鹿児島茶を語る上で欠かせないのが、その圧倒的な見た目の美しさと、口の中に広がるどっしりとしたコクです。全国第2位の生産量を誇る鹿児島県ですが、近年ではその品質の高さから、あえて「鹿児島茶」を指名買いするファンも急増しています。特に若い世代からも支持されるその魅力について深掘りします。
鹿児島茶の最大の特徴は、なんといっても「水色(すいしょく)」の鮮やかさです。急須から注がれたお茶は、まるで新緑をそのまま液体にしたような深い緑色をしています。この視覚的な美味しさが、飲む前から期待感を高めてくれます。そして一口飲めば、その期待を裏切らない濃厚な甘みが広がります。
この濃厚さは、南国の恵みである豊富な日照時間と、それを最大限に活かす農家の方々の技術の結晶です。火入れと呼ばれる乾燥工程でも、鹿児島独特の少し強めの焙煎を施すことがあり、これがキャラメルのような香ばしさと甘みをさらに引き立てています。一度ハマると抜け出せない魅力が鹿児島茶にはあります。
「さえみどり」などの人気品種がもたらす感動
鹿児島茶の甘さを支えているのは、品種改良によって生まれたエリート品種たちです。代表格の「さえみどり」は、旨み成分が非常に多く、渋みがほとんど感じられないほどマイルドです。初めてこのお茶を飲んだ人は、「お砂糖を入れたわけでもないのに、どうしてこんなに甘いの?」と驚くことも珍しくありません。
また、「ゆたかみどり」という品種も鹿児島を代表する存在です。この品種は、深蒸し製法と非常に相性が良く、淹れたときにお茶の成分がしっかりと溶け出します。特有の「芋のような甘い香り」があると言われており、他の産地ではなかなか味わえない独特の幸福感を味わうことができるのです。
これらの品種は、寒さに弱いという弱点がありますが、温暖な鹿児島県だからこそ元気に育てることができます。産地の特性と品種の個性がガッチリと噛み合っているからこそ、私たちはこの素晴らしい甘さを享受できるのです。バラエティ豊かな品種から自分好みの一品を探すのも、鹿児島茶の楽しみ方の一つです。
被覆栽培による「天然の旨み」の凝縮
鹿児島茶の多くは、収穫の数日前から茶園全体を黒いネットで覆う「被覆(ひふく)栽培」を行っています。これはもともと玉露などの高級茶で行われていた技法ですが、鹿児島では煎茶の段階から積極的に取り入れられています。日光を遮ることで、茶葉の中の旨み成分がギュッと凝縮されるのです。
日光を浴びると、旨み成分であるテアニンは渋み成分のカテキンへと変化してしまいます。あえて光を遮ることで、お茶が持つ本来の甘みを守り抜くわけです。この工程を経た茶葉は、より濃い緑色になり、味わいも非常にまろやかになります。これが、鹿児島茶特有の「とろみ」のある甘さの正体です。
この手間暇かけた栽培方法こそが、鹿児島茶を「甘いお茶」の代名詞へと押し上げました。機械化による効率化と、職人の手仕事のような丁寧な管理。その両立によって、私たちはリーズナブルでありながら非常にクオリティの高い甘いお茶を楽しむことができるようになっています。
深蒸し製法による「コク」の追求
鹿児島茶の代名詞とも言える「深蒸し」は、茶葉を蒸す時間を通常の2倍から3倍長く取る製法です。長く蒸すことで茶葉の組織が崩れやすくなり、普通のお茶では抽出されないような食物繊維やビタミン、クロロフィルといった成分までが丸ごとお湯の中に溶け出してきます。
これが、鹿児島茶独特の「濁りのある深い緑色」と「どっしりとしたコク」を生み出します。透明度の高いお茶も美しいですが、成分がしっかりと溶け出した濁りのあるお茶は、舌の上で感じる情報の密度が違います。飲みごたえがあり、一杯での満足度が非常に高いのが特徴と言えるでしょう。
特に、お茶を淹れた後の急須に残る茶葉が、粉のように細かくなっているのが深蒸し茶の証拠です。この細かい粒も一緒に飲むことで、お茶の健康成分を効率よく摂取できるというメリットもあります。甘みだけでなく、体に染み渡るような力強さを感じたいときには、鹿児島の深蒸し茶が最適です。
静岡茶が持つ「気品ある香りとキレ」の黄金バランス

日本茶の歴史を支えてきた静岡茶は、まさに「お茶の王道」と呼ぶにふさわしい風格を持っています。生産量日本一を誇り、多種多様な銘柄が存在する静岡県のお茶は、一言で「甘い」と表現するよりも、「奥深い」と表現するのが適しています。食事との相性も抜群で、日常に寄り添ってくれる味わいです。
静岡茶の魅力は、なんといってもその「香り」の良さにあります。特に「浅蒸し」や「普通蒸し」と呼ばれる伝統的な製法で作られたお茶は、急須から立ち上がる湯気が非常に清々しく、心を落ち着かせてくれます。口に含むと、まずは上品な香りが鼻に抜け、その後に適度な渋みが追いかけてきます。
この渋みがあるからこそ、お茶の甘みや旨みがより一層引き立つのです。これを「キレがある」と表現することもあります。後味がスッキリとしているため、脂っこい食事の後や、甘い和菓子と一緒にいただく際には、静岡茶の右に出るものはありません。飽きのこない、長く愛され続ける理由がそこにあります。
「やぶきた」が築き上げた日本茶の基準
現在、日本で栽培されているお茶の約7割を占める「やぶきた」という品種は、静岡県で発見されました。このやぶきたこそが、私たちがイメージする「日本茶の味」のベースになっています。静岡茶を飲むと、どこか懐かしく、ホッとする安心感を感じるのはそのためかもしれません。
やぶきたは、濃厚な旨みと程よい渋みのバランスが極めて優秀です。静岡の豊かな土壌で育ったやぶきたは、しっかりとした骨格のある味わいになります。単に甘いだけでなく、お茶の醍醐味である「心地よい苦み」を適度に残しているため、大人の嗜みとしての満足感をしっかりと与えてくれます。
また、静岡県内でも地域によって味わいが微妙に異なるのも面白い点です。広大な静岡県では、それぞれの土地の気候に合わせてやぶきたを栽培しており、それが「銘柄茶」としての個性を生んでいます。王道の味でありながら、探求すればするほど新しい発見があるのが静岡茶の奥深さなのです。
「川根茶」や「本山茶」など山間部の高級感
静岡茶を語る上で、山間部で作られる「山のお茶(山茶)」は外せません。大井川の上流にある川根地区や、安倍川上流の本山地区などは、古くから高級茶の産地として知られています。山の急斜面にある茶園は、昼夜の寒暖差が激しく、これがお茶の香りを凝縮させる鍵となります。
山間部の茶葉は、平地のお茶に比べて葉が肉厚で、じっくりと時間をかけて育ちます。そのため、淹れたときの色は澄んだ黄金色(こがねいろ)になることが多いです。見た目は淡いのですが、一口飲めばその香りの強さと、喉を通り過ぎた後に戻ってくる甘い余韻(あと味)に驚かされることでしょう。
こうした山の高級茶は、まさに「気品」という言葉がぴったりです。大切な来客があった際や、自分へのご褒美として静かな時間を過ごしたいときに、ゆっくりと淹れて楽しみたいお茶です。静岡茶が持つポテンシャルの高さは、こうした厳しい自然環境の中で磨かれたものなのです。
熟練の技が光る「仕上げの火入れ」
静岡茶の美味しさを完成させる重要な工程が、乾燥とともに香りをつける「火入れ」です。静岡には古くから「茶師(ちゃし)」と呼ばれる専門家がおり、その年の茶葉の状態を見極めながら、最適な温度と時間で熱を加えていきます。この技術が、静岡茶特有の香ばしく力強い香りを生み出します。
火入れの具合によって、お茶はさまざまな表情を見せます。若草のようなフレッシュな香りを残すこともあれば、じっくりと火を通してお米を焼いたような香ばしい甘みを引き出すこともあります。静岡のお茶問屋が競い合って磨き上げてきたこの仕上げ技術こそが、静岡ブランドを支える屋台骨です。
この工程があるおかげで、静岡茶は淹れた瞬間だけでなく、冷めても香りが崩れにくく、最後まで美味しくいただくことができます。職人のこだわりが詰まった一杯は、まさに芸術品。単なる農産物としての域を超えた、文化としての深みを感じさせてくれるのが静岡茶の素晴らしいところです。
静岡茶の楽しみ方は「香り」にあり!
静岡茶、特に普通蒸しのお茶を淹れるときは、少し高めの温度(80〜85度程度)でサッと淹れると、素晴らしい香りが立ち上がります。部屋中に広がるお茶の香りで、リラックス効果も抜群です。
【徹底比較】鹿児島茶と静岡茶の違いを一覧でチェック

ここまでそれぞれの特徴を見てきましたが、実際にはどのような違いがあるのかを一覧表でまとめてみました。自分が求めている「甘み」がどちらに近いのか、判断する際の参考にしてみてください。もちろん同じ産地でも商品によって個性はありますが、一般的な傾向として捉えていただければ幸いです。
| 項目 | 鹿児島茶(深蒸し中心) | 静岡茶(普通蒸し〜深蒸し) |
|---|---|---|
| 主な味わい | 濃厚な甘み、強いコク、まろやか | 爽やかな香り、上品な甘み、キレ |
| 見た目の色 | 鮮やかで濃い緑色(濁りがある) | 透明感のある黄金色〜澄んだ緑色 |
| 主な品種 | さえみどり、ゆたかみどり、あさつゆ | やぶきた、おくひかり、つゆひかり |
| おすすめシーン | リラックスタイム、お茶単体で楽しむ | 食事中、和菓子のお供、気分転換 |
このように比較してみると、両者のキャラクターが大きく異なっていることが分かります。鹿児島茶は「主役になれるお茶」、静岡茶は「食事を美しく引き立てるお茶」とも言えるかもしれません。どちらが良い悪いではなく、その日の気分やシチュエーションで使い分けるのが、真のお茶通の楽しみ方です。
見た目の違い:濃い緑の鹿児島、黄金色の静岡
急須から注いだ瞬間の色は、最も分かりやすい違いです。鹿児島茶は、茶葉が細かくなっているため、お湯に溶け出した成分が光を反射し、深みのあるエメラルドグリーンのように見えます。この視覚的なインパクトは非常に強く、「美味しそう!」という直感的な喜びを与えてくれます。
一方で静岡茶(特に浅蒸しや山間部のお茶)は、グラスの底まで見通せるような透明感があります。その色は「黄金色」と表現されることが多く、非常に優雅で上品です。見た目の涼やかさは、夏場のアイスティーとしても美しく映えます。視覚から受ける印象も、味の感じ方に大きく影響を与える要素の一つです。
どちらの色のほうが美味しそうに感じるかは人それぞれですが、現代では「色の濃いお茶=味が濃くて美味しい」というイメージを持つ方が増えているため、鹿児島茶の鮮やかな緑色は非常に人気があります。しかし、静岡茶の澄んだ色合いの中に秘められた複雑な味わいも、捨てがたい魅力です。
香りの違い:香ばしさとフルーティーさ、清涼感
香りにおいても、はっきりとした違いがあります。鹿児島茶は、品種特有のフルーティーな香りや、火入れによる香ばしさが融合した、甘く濃厚な香りが特徴です。特に「あさつゆ」という品種は「天然玉露」とも呼ばれるほど、青々しくも甘い独特の香りを放ちます。
静岡茶の香りは、もっと直線的で「清涼感」に満ちています。新茶の時期には「若葉の香り」が最も強く感じられ、それはまるで森の中で深呼吸をしているような心地よさです。また、焙煎の技術によって生まれる「お茶本来の香ばしさ」が際立っており、これが多くの日本人に馴染みのある安心感を生んでいます。
リラックスしたいときには鹿児島の甘い香りを、頭をシャキッとさせたいときには静岡の清々しい香りを選ぶというのも良いアイデアです。お茶は「飲むアロマ」とも呼ばれるほど香りの効果が大きいため、ぜひ鼻に抜ける感覚を意識して飲み比べてみてください。
ペアリングの違い:どのお菓子や料理に合う?
お茶をさらに美味しくいただくなら、食べ物との相性(ペアリング)も大切です。鹿児島茶の濃厚な甘みは、それ自体が満足感のある味わいなので、控えめな甘さの生菓子や、塩気の効いたおせんべいなどによく合います。また、そのコクの強さは、洋菓子のバターやクリームの風味にも負けません。
静岡茶は、そのキレの良さを活かして、食事全般との相性が抜群です。焼き魚や煮物といった和食はもちろん、お寿司などの繊細な味わいを邪魔することなく、口の中をさっぱりとさせてくれます。また、羊羹(ようかん)のようなしっかりとした甘さの和菓子と一緒に飲むと、お茶の渋みが甘さを中和し、絶妙なハーモニーを奏でます。
食事の最後に飲む一杯なら、口内をリセットしてくれる静岡茶。三時のおやつにじっくりと味わうなら、甘みが際立つ鹿児島茶。このように使い分けることで、それぞれの産地のメリットを最大限に引き出すことができます。毎日の生活シーンに合わせて、お茶をセレクトする贅沢を楽しんでみませんか。
【おすすめの選び方】迷ったときはこう選ぶ!
・とにかく甘くて濃いお茶が好き! → 鹿児島茶の「さえみどり」や「あさつゆ」
・お茶らしい香りとスッキリ感が欲しい! → 静岡茶(川根・本山など)の「やぶきた」
・普段使いで食事と一緒にガブガブ飲みたい! → 静岡産の「深蒸し茶」
お茶の甘みを最大限に引き出す美味しい淹れ方のコツ

せっかく良いお茶を手に入れても、淹れ方を間違えてしまうと本来の甘みが逃げてしまいます。「鹿児島茶と静岡茶、どっちが甘い?」という問いに対して、真の答えを出すためには、それぞれのポテンシャルを100%引き出してあげることが欠かせません。誰でも簡単にできる、甘みを引き出すポイントをご紹介します。
お茶の甘み(テアニン)と渋み(カテキン)には、抽出される温度に違いがあります。渋み成分は高温のお湯で出やすいのに対し、甘みや旨み成分は低温でもじっくりと溶け出します。つまり、お湯の温度を少し下げるだけで、どんなお茶でも甘みを強く感じられるようになるのです。
また、抽出時間(蒸らし時間)も大切です。茶葉がゆっくりと開くのを待つことで、旨みがじわじわとお湯に移っていきます。急いで急須を振ったりせず、静かに待つのが美味しくなる魔法です。これから紹介するステップを意識して、いつもの一杯を極上の甘いお茶に変えてみましょう。
お湯の温度管理が「甘さ」の鍵
最も重要なのは、沸騰したてのお湯をそのまま急須に入れないことです。一度、湯呑みや湯冷ましにお湯を移すことで、温度を5度から10度ほど下げることができます。鹿児島茶や静岡茶の高級なランクであれば、70度から80度くらいのお湯で淹れるのがベストです。
お湯を移し替えるたびに温度は下がりますので、冬場なら1〜2回、夏場なら少し長めに置いて調整してください。温度が低ければ低いほど、渋みが抑えられて「とろりとした甘み」が際立ちます。特に鹿児島茶の品種はこの恩恵を受けやすく、驚くほどまろやかな味わいになります。
逆に、静岡茶の香りを立たせたい場合は、少し高めの85度程度で淹れるのも正解です。しかし、「甘さ」を最優先したいのであれば、やはり一呼吸置いて温度を下げてから淹れることをおすすめします。ほんの数十秒の我慢が、口に入れた瞬間の感動を大きく変えてくれます。
「最後の一滴」に詰まった旨みを逃さない
お茶を注ぐ際、つい適当に切り上げてしまいがちですが、実は急須の中に残った最後の一滴には、最も濃い旨みが凝縮されています。これを「ゴールデンドロップ(黄金の一滴)」と呼びます。急須をしっかりと傾けて、最後の一滴まで出し切ることが、甘いお茶を淹れるための鉄則です。
また、最後の一滴まで出し切ることは、2煎目を美味しくすることにも繋がります。急須の中に水分が残っていると、その間に茶葉がふやけてしまい、次に淹れるときには味が落ちてしまいます。お湯を切るようにして注ぎきれば、2煎目も鮮やかな色と十分な美味しさを楽しむことができます。
特に鹿児島の深蒸し茶は、成分が濃いため最後の一滴にその濃厚さが詰まっています。静岡の山間部のお茶であれば、最後の一滴に宿る気品ある香りが、湯呑みの中でパッと広がります。道具を大切に使い、丁寧に最後の一滴を注ぐ所作そのものが、お茶をより美味しく感じさせてくれるはずです。
茶葉の量と浸出時間を守る
「なんとなく」で決めてしまいがちな茶葉の量ですが、これも味を大きく左右します。一般的には、一人分でティースプーン一杯(約2〜3g)が目安です。これを守るだけで、薄すぎず濃すぎない、お茶本来の甘みが最も感じられる濃度になります。多すぎると渋みが勝ち、少なすぎると水っぽくなってしまいます。
浸出時間は、普通蒸しのお茶で約1分、深蒸しの鹿児島茶で約30秒から45秒程度が目安です。深蒸し茶は茶葉が細かいため、短い時間でも十分に成分が出ます。時計を見て正確に測る必要はありませんが、「茶葉がゆっくりと開いていく様子」をイメージしながら待つ時間は、とても豊かなものです。
もし、もっと甘くしたいと思ったら、茶葉の量を少し増やし、逆にお湯の温度をさらに下げてみてください。じっくりと時間をかけて抽出することで、出汁のような濃厚な旨みを体験できることもあります。自分にとっての「黄金比」を見つけるのも、お茶を楽しむ醍醐味の一つと言えるでしょう。
鹿児島茶と静岡茶、自分にぴったりの「甘さ」を見つけるまとめ
「鹿児島茶と静岡茶はどっちが甘い?」という問いへの答えは、「濃厚で分かりやすい甘みを求めるなら鹿児島茶、上品でキレのある甘みを求めるなら静岡茶」ということになります。どちらも日本が誇る素晴らしい文化であり、その土地の風土や歴史が味に反映されています。
鹿児島茶は、南国のエネルギーと最新の品種改良、そして深蒸し製法が組み合わさった「現代的な美味しさ」があります。鮮やかな緑色と、とろけるような甘みは、一度体験すると忘れられないインパクトがあります。リラックスしたいときや、お茶そのものを贅沢に味わいたいときにぴったりです。
一方の静岡茶は、伝統に裏打ちされた「王道の美味しさ」を守り続けています。清々しい香りと、渋みがあるからこそ際立つ気品ある甘み。どんな食事にも寄り添い、日常を少し豊かにしてくれるその安定感は、日本人の原風景とも言える味です。香りに包まれて気分転換したいときに、これ以上のものはありません。
最近では、産地をブレンドしたお茶や、各産地の特徴を活かした新しい商品もたくさん登場しています。大切なのは、どちらか一方に決めることではなく、その時の気分やシーンに合わせて選べるようになることです。今日、あなたが飲みたいお茶は、どちらの「甘み」でしょうか。
この記事をきっかけに、ぜひ鹿児島茶と静岡茶の両方を手にとって、自分自身の舌でその違いを確かめてみてください。お湯の温度を変え、淹れ方を工夫する中で、あなただけの「最高に甘い一杯」に出会えることを願っています。お茶のある豊かな生活を、これからも存分に楽しんでくださいね。



